書かない窓口とか、住民サービスとして目に見えるところにデジタル技術を活用する、という取り組みはあちこちで見られるようになってきました。それ自体はいいことだと思います。
ですが、それがトランスフォーメーションなんですか?というと、甚だ疑問を感じます。劇的な仕組みの変革をデジタルが支える、それがDXの筈ですよね。でもそんな風になっているとはとても思えず、取り組まれているのは末端の紙がデジタルツールになる、というだけじゃないですか?
そもそもデジタル技術って…
私は大して社会的な影響力はありませんし、このウェブサイトにしたってそんなに多くの人が見てる筈もありませんので、ある程度は極端なこと言ったってまぁ問題はなかろうと思います。ということで、ここから先は自分でも戯言だなぁということを承知している、ということで。
デジタル技術というのは、基本的に集中して管理するのが好ましいものだと思います。あらゆる情報は一括管理され、どこに何があるか瞬時にわかり、何かあればそれに対してすぐ手を打てることが望ましい。処理や保管場所は分散しててもいいですが、管理は集中しているべきなんです。
それ故に、デジタル技術を上手に使えるのは、独裁とか専制とか言われる仕組みなんだろな、と思います。近所の国を見ていて、そう思いません?ちなみに民主主義国家の代表をおそらく自認しているであろうかの超大国にしたって、リーダーの権限ってのは極めて大きくされており、日本のように何でもかんでも大勢で協議して調整して…なんてことはありません。
ちょっと話がそれました。
集中管理が望ましいデジタル技術ですが、それを一つの制度の下でバラバラに導入してしまった最たる例が、我が日本の住民基本台帳です。
制度とシステムの不幸な関係
既にご承知の方も大勢いらっしゃると思いますが、住民基本台帳システムは各基礎自治体が独自に導入しいますので、バラバラです。そしてそんなバラバラに整備されたシステムが、日本にはいくつもあります。それを標準化しよう、というのが国の政策になっています。
いくつも…と言いましたが、この国の政策で対象とされたのは以下の17業務。
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 児童手当
- 生活保護
- 健康管理
- 就学
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
これらが各自治体でバラバラに導入されているのが効率が悪い、といって何をするかと思えば、「標準仕様を作るからそれに従ってシステム導入せよ」なんです。
そんなことしたら、またぞろあちこちで連携に不具合でまくるそ。それでなくても各自治体が発注しまくって大変なんやから、品質なんて保てるわけなかろ。
建前はね、自治体の事務だから自治体の意思を尊重しよう…なんてことだったりするんですが、馬鹿げてます。自治体側からしたら、一番面倒くさいところを自治体に押し付けておいて、自分らエエカッコしいなだけやんけ、ってなもんですわ。
極端なこと言いますよ。
こんなもん、国がまとめて作って自治体に使わせたらええねん。自治なんて制度が邪魔なら、やめてしまえ。一旦全部ぶっつぶして中央集権で仕組み作り直して、またあらためて分割したらよろしいがな。
現代の維新?
まずお断りしておきますが、既存政党の維新は関係ありませんよ。
明治維新によって行われた社会制度改革の大きな柱の一つが廃藩置県であったことは、まぁおおかたの人が賛同してくれると思います。それと似たようなことを行政デジタル分野においてやらねばならない時期にきてるんじゃないかしらん。
私は、行政のデジタルトランスフォーメーションは、地方分権の真逆であるべきなんじゃないかと思うんです。言い換えるとデジタル中央集権化。自治体の垣根なんかブチこわして一旦全部国でまとめてシステム化して、そのあと各自治体には上手に利用させてあげればいいんじゃないかと。
どーせね、なんだかだ言って今でも自治体なんて国の出先機関みたいな扱いをしばしばやってるじゃないですか。今更、綺麗ごと言ってないで責任とれって話です。
乱暴なことを言っているのは承知の上です。
ですが、地方のことは住民自身が決める…って言ってることと、国が法律で定め全国一律で運用されるべきとしている制度の扱いを一緒くたにするほうが乱暴なんじゃないですか?
どうして今までそうなってなかったのか?それは、情報を取り扱う媒体が紙だったからです。紙だった時代はまとめて管理することなんてできませんから、自治体ごとに管理してもらう形が都合がよかった。だから権限を自治体に移した。機関委任事務とかってまさにコレでしょに。
現代、情報を保存し伝達する手段は紙からデジタルデータに変化しました。管理方法も変わるのが当たり前であり、機関委任事務などもそのありようは変わっていいはずです。紙による仕組みがあまりに精緻でよくできてたもんだから、デジタルになっても紙の発想から抜け出せないままでいるだけです。
DXは、無駄な事務を早くやるためにデジタル技術を使うこと…ではありません。
無駄な事務を無くすための制度改革にデジタル技術を使うことです。民間で言うBPRって、そういうことだったはず。ビジネスプロセスをリエンジニアリングなんだもの。
デジタル国家とやらを標ぼうするのであれば、妙なツールにこだわるばかりの枝葉末節なことではなくて、もっと根本的なことから見直ししていただきたいものです。ハンコだカードだなんてツールのことばかりグタグタ言ってるような人たちには、とても担えるとは思えませんが。
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