マイナ保険証の取得率は国のほうが酷い

電脳雑記

国のお役人さん達のマイナ保険証の利用率が異様に低いそうです。報道はこちら(朝日新聞のウェブサイトが新しいウィンドウで開きます)。

地方自治体に無理強いしといて…

マイナンバーカードは最初からもう滅茶苦茶でした。

自治体に対して、国はあの手この手で普及促進を図るようにプレッシャーをかけてきてたんです。中には交付金を出す前提として…みたいな話もあったりして、もめたこともありました。

私は県庁の職員だったころ、情報システム部門の人でしたので、マイナンバーカードの普及に関してもやらされてました。このため、各所属に対して普及率を調査してプレッシャーをかけねばならない立場だったんです。あくまで職員の自発的な意思によらねばならないとしつつ、とったか?やったか?って聞いてまわり、普及率を首長に報告しますよと言ってるんですから、ありゃダイレクトに言わないだけで完全に押し付けです。「察しろ」ってヤツですよ。ちょー日本的。

当然、自分達は情報システム部門ですから、それらは真っ先に取得率100%でなければなりません。自分達の存在意義にも関わるぞってことで自分の所属の皆さんに関しては、職員個人にプレッシャーをかけるわけ。あんなのがまかり通るって、間違ってると思いますけどね。

この話はマイナンバーカードの普及率の件でしたが、マイナ保険証にしたって似たようなもんでしょに。国から何か言われる度に、自治体でもヤレヤレって言いまくるわけです。

ところが、その国ではどーよ?ってゆーと、この体たらく。バカ言ってもらっちゃ困ります。テレビでも報じてましたが、「別に利便性を感じないから」…こらこら。

わたくし考えるに、この諸悪の根源はやはり道具と目的をはき違えたエライさんの勇み足にあると思うんです。あの人たちゃ分かりやすいもんだから普及率とかを気にします。でも本来、普及率なんてのは利便性が大勢に認められて初めて上がってくるものであって、無理矢理普及させたところで死蔵されるのがオチであることはほぼ間違いなし。

だから足元の国家公務員すら見向きもしないってわけですよ。

マイナ保険証は便利なのか?

厚労省は色々と利便性をうたってますが、正直なところ全然響きませんよね。そのことは以前の本サイトの記事でも述べています(記事はこちら

まぁ簡単に言って、利便性なんかほとんどありません。事務が早くなります?普段通っている主治医、なんてぇのは近所の診療所なわけで、保険証なんてパっと渡してホイおしまい、みたいな感じで確認してもらえるんです。あんな機械でゴチャクチャやる手間考えたら、人間の目で顔パス、のほうが早いに決まってます。

それに、診療を受けるのにかかる時間のトータルを考えてごらんなさい。保険証の確認にかかる時間が、そんなに大きな割合を占めると思います?

診療情報が共有できて…医療に使えますかね?病院を変わったら、検査は同じようにまたやりますよ。紹介元の病院の検査をそのまま信じるなんて無理でしょうね。医者がそれを簡単にヨシとするとは思えません。検査のオーダーは、その時々で結構細かい指示を出してますし、最悪取り違えなんてリスクもあるんですから、自らオーダーして間違いない最新のデータで診療にあたりたい、それが当然でしょ?参考にはするかもしれませんが、検査が大幅に減るとは思えない。

薬の重複が減ります?それ、誰のメリットなんでしょうね?

ここからは邪推というかメッチャ性格悪い推測・憶測です。

製薬会社にとって、良いことでしょうか?商売にとって、ですよ?倫理はとりあえず置いといて。たくさん薬が売れたほうが嬉しいに決まってます。はっきり言わないだろうけど、重複して処方され薬がバンバン売れれば、儲かるんです。マイナ保険証で薬の情報を共有し重複処方を防ぐ…全くメリットありませんな。

当然、調剤薬局とかも同じです。薬が売れれば売れるほど商売的には嬉しいんですから、何がメリットなのか全然わからん。

お医者さんはどうでしょう?これまた、ビジネスとして、の話。処方箋をたくさん書けば、その分実入りになるんです。必死こいて重複処方を減らそうとすると思います?「他の医者が処方することについては、知らん。患者の責任においてやってちょうだい。」こーゆー反応になって当たり前です。医は仁術?いいえ、違います。ちゃんとした商売です。色々と縛りがあって、高い倫理性を求められるビジネスです。もちろん、仁術を体現している方々も大勢いらっしゃることでしょうが、患者が病気で困らなければ、健康でいてくれれば、無茶に気にしないんじゃないですかね?

つまりこうしてみると、医療費というのは医療関係者にとって、ことビジネス面だけに着目すれば高けりゃ高いほどうれしいわけで、重複したところでご自身が困るわけではなく、社会的正義に意識の高い方が「けしからん!」と言ってくれるくらいが関の山じゃないですか?

医療関係の方が銭ゲバ、とか言ってるんじゃありませんよ。高い倫理観をもった方も大勢いらっしゃいます。大方の医療関係者自身にとって、身につまされる問題か?ということを言いたいんです。

マイナ保険証によって医療費が下がったとすると、それが一番うれしいのはです。だからそれを押し付けたい。でも、押し付けようとする先の人たちにはメリットが見えない。普及なんてするわけありませんな。

どうなっていくのか?

本当は紙の保険証を強制的に廃止なんてことはやめて任意にして、長期間かけて利便性を高めていくしかないでしょうね。でもそれはできない。もう廃止は法律で決まってしまいましたから。

とすると、今後はどうなるか?

端末やカードのためにコストがかかり、その割に医療事務とか医療サービスとかの効率が上がるわけでもなく、医療機関にとっては負担が増えるばかり。それを埋め合わせるために点数を調整するのかもしれませんが、その調整とは即ち被保険者の負担増ということになります。

残念ながら、今のマイナンバー関連の制度や仕組みってのは、日本全体としての生産性向上に役立つどころか、むしろマイナスなんじゃないか…ということを大変危惧します。

いよいよデジタル敗戦が濃厚…というかもうとっくに敗けてて、今は復興すらままならぬってことなのかもしれません。

それを何とかしようってんなら、今までに作り上げられてきた紙ベースの大変精緻な制度・仕組みを根本からひっくり返して作り直すくらいの大変化が必要なように思いますが、残念ながらこの国の政治屋にそんなことがわかる人、将来像が描ける人がいるようにはとても思えません。

何しろ一番わかってなさそうな人たちですもんね。

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