原則キャッシュレスの過ち

電脳雑記

埼玉県では、2024年(令和6年)1月から原則すべての手続きにおいてキャッシュレスを導入することにしたそうです(県庁の周知ページはこちら)。

そのおかげで、免許更新の際に大混乱になりました、というのが話題になってました(弁護士ドットコムニュースの記事はこちら)。

どうやら周知不足が原因ということのようですが、それだけだと多分考察が足りません。

何があった?

ヤフーニュース(一応、リンクはこちら)はすぐ消えちまいますから、すいませんがソースを残す意味でスクショさせてもらいます。

免許更新の際に必要手数料納付にあたって、従来は窓口で現金を支払って収入証紙を購入していましたが、それをキャッシュレス決済にしたそうです。このため、決済手段を現金しか持ち合わせていない人は、窓口で納付を断られ、コンビニや金融機関で納付してから出直してこい、となるそうで。

どうやら周知が足りなかったようで、ワケわからずに出直しを求められる人が続出したんですな。それで大混乱になっているんだとか。

令和6年1月からは収入証紙の販売は無くしました、ということなので、収入証紙廃止と並行して進められているようです。1年後の1月には証紙自体使えなくなり、還付での対応になるそうな。もし手元に残している場合は、はやいところ使い切ってしまわないといかん、ということですねぇ。

収入証紙って?

通常、地方自治体の会計事務で何かしら収入する場合は、まず相手と内容がきちんとしていることを確認します(これを「調定」と言います)。それに従って収入命令を発し、納入通知書(納通)を相手に送ってお金を納付してもらい、その納付を確認する(これを「消し込み」と言います)ことになります。

収入証紙というのは、この手続きの順番を少し入れ替えて、より簡単に会計処理できるようにした仕組みです。まずお金を払ってもらって、払いましたよってゆー証拠となるのが「証紙」です。その収入金は役所で一旦プールされ、証紙が貼られた申請書とかを受け取ると、金額が正しいことを確認し、そのプール金からその事務に使いましたよ、ということでお金を割り当てます。

調定から収入命令、納付確認という手続きが無く、とりあえずお金もらっといて後で割り振る、という仕組みになっているわけ。

なんでこんな面倒くさいことをするかというと、証紙で納付されるお金というのはたいがい特定の事務手続き(申請とか)の手数料なわけで、その事務処理に必要なお金ですねってことで事務担当所属にお金を渡さないといかんのです。もらった所属は、そのお金を人件費とか消耗品費とかの財源にします。

この収入証紙が、買うほうにしてみたら買える場所が限られてて面倒くせぇし古くせぇってことで昨今やり玉に挙げられることが多いのです。

まぁ、古臭いことは否定しませんが、じゃあ証紙の問題って何ですか?というと、「買うのが貼るのが面倒くさい」ってことにあるわけで、事務自体は意外と簡便になるように工夫されている、というのが本当のところです。

だとすると、証紙を売る場所が増えれば便利になるじゃんよ、とか、通信販売すりゃよさげじゃね?とかなりそうなもんですが、証紙は証紙販売所で販売しており販売実績を報告しないといけませんから、面倒くさいんです(この場合の面倒くさいは、販売所となる人が面倒くさいってことです)。

通販で証紙ってのもなんか変ですよね。だったらそこを電子納付にして納付証明書を電子的に発行すりゃいいじゃんって思います。全部オンライン申請になっていれば、納付は手続する度に行えますから、わざわざプールするような面倒くさいことをしなくて済みますし。

7~8割はキャッシュレスに対応してくれてるそうな

証紙の廃止は他に先行している自治体(記事によると東京都や大阪府、広島県)があるそうで、現金納付になっているそうな。埼玉県は現金を認めず電子決済のみにしてしまったというところが大きな違いですなぁ。

で、窓口が混乱しているとは言うものの、7~8割の人はそれに対応してくれているんだし、慣れの問題でしょ?的なことを県の方は仰っているそうで(記事スクショ↓)。

でもね、残りの2~3割の人が窓口でゴチャゴチャするおかげで、7~8割の人も行列が伸びて時間がかかるというのに巻き込まれちゃうじゃないですか。そもそも政府って「誰一人取り残さない」って言ってなかった?

根本的に間違ってると思います

今回のトラブルは、DXだ!とイキってキャッシュレス決済の導入を慌てて進め、そこからこぼれてしまう人たちへの配慮が足りなかったということになります。キャッシュレスに慣れてない人がいる、ってのはハナからわかってたはずなんだから。

それともう一つ。

証紙を廃止すると言いますが、それって本当に効率よいことなんでしょうか?って話。事務的には、先述したとおり通常の会計事務より簡単なんです。東京都などの先行自治体において証紙の代わりにどのような仕組みを導入したのかは知りませんが、現金でも受け付けるとしたら結構面倒な仕組みになりそうな気が。支払ったということをどうやって確認するのかしら?それは別途調べてみないといけませんな。

埼玉県のこのトラブルのケースも、別に現金をもらって証紙の代わりに納付済みってスタンプでも窓口でポンと押しておけば、それでいいんじゃね?って思います。納付をキャッシュレスにしなきゃいかん!ってことにこだわりすぎてませんでしたかね?

クレジットもJCBは受け付けないとか妙なことを言ってるじゃないですか。普通の店でできることが県ではできないとなると、そら混乱しますわな。

これもまた事務全体(利用者の動線全体)を検証しなかったことで生じたわけですよ。役所的には、「キャッシュレス!」という掛け声だけで、あまり詰めた検討をしているようには思えないですなぁ。

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