出世したくない人ばかりの組織って…

備忘録

今回は、私がメインで扱いたいITとかからはちと話題が逸れますがご容赦を。元が自治体職員だっただけに、ちょいと気になってしまいまして。

こちらはヤフーニュースに掲載された2023年12月22日の読売新聞の記事です。

(同じ内容の読売新聞のサイト記事だとこちら

それによると、香川県高松市役所において、昇任試験を受験する人がえっらく少なくなっているそうです。

どうしたの?

記事によると、2013年度の頃は昇任試験を受けた人の割合が19.2%だったのに対して、2022年度は9.1%と半分以下になっちゃってるそうな。

市長さんのコメントによると「今後の組織運営を考えると大変憂慮している」そうで、そらぁそうですわなぁ。管理職のなり手がいなくなっちゃったら、全部自分が下っ端に直接指示せにゃならんくなるわけで、途中でいろいろと整理しまとめてくれる人がいないってことになりますもんね。

こんな状況じゃ困ったぞ、ってことで「ふさわしい人が管理職にならなくなる可能性がある」とかいう市のコメントとやらが出ています。市長じゃなくて市と言ってますから、おそらく人事関係の幹部とか、人事課長あたりの発言なんでしょうね。

あたしゃこの発言、結構まだ余裕かましてるなぁってゆーか、呑気だなぁって思うんですが。

対策としては、今までは自発的に試験を受ける仕組みだったのを推薦制にしたりとか、条件緩和、試験内容の変更といったことをやるそうです。昇任意欲を醸成しふさわしい人材を積極的に登用できる制度に見直すそうで。

でも、この問題の根っこにあるものって、申し訳ないけどそんな小手先のこっちゃないと思うんですよね。

管理職になる魅力とは?

威張れるから?ふんぞり返って下っ端に色々とヤレって指示してりゃ、自分は日暮れりゃ腹減るでのんびり過ごせる、そーゆー立場だから?

恐ろしいことに、役所の外の人って未だに役人がそんなんやって思ってる人がいるんです。

こいつぁ、間違ってます。

今時は、部下の面倒を滅茶苦茶きめ細かく見ていなければなりません。ハラがあっちゃいけませんから厳しい指導なんてこともなく、常に穏やかに理路整然と説明し指導し、でも時には大変な仕事を依頼せねばならないこともあり。

災害対応だの感染症だの、様々な大きなトラブルがあって人員が必要になった時、まず最初に役所の人に動員がかかります。管理職は、自分の部下の日常業務の状況を勘案しつつ、だれを出すか決めて、お願いせねばなりません。

もちろん業務上の命令ですよ。指示すりゃ従うってのが当たり前だろって思います?だとしたら、全然認識が甘い。

突然の動員のために人を出すってことは、その人の仕事をカバーしてもらう人を選ぶってことでもあります。仕事の配分を見直しせねばなりませんが、そもそも普段から対して余裕があるわけでもないのに、でも時間外労働が増えることもゆるされないんです。

こんな無理ゲーありますかって。

それが管理職。部下に対してふんぞり返るなんてありえません。頭は下げるためにあるんです。

じゃあ、ほかに魅力はないんだろうか?例えば自分の考えた政策・企画を実現したいとか?自分たちの地元の未来を自分たちで作るんだ!エイエイオー!

新しい政策を考えたとして、それを実現するためには予算が必要であり、事業執行のためには人員確保が必要。それは財政・人事といった当局との交渉が必要であり、最終的には首長の了解がなければなりません。

決して、なんでもできるってわけじゃないんです。

もちろん、その仕事自体はやりがいあることでしょう。自分の考えた政策が実現した時の爽快感ってのはありますよ。ですがちょい待ち。定期的な人事異動がありますな。だいたい2年とか3年で異動するんじゃなかった?

その仕事、ずっと続けられます?

じゃあじゃあ、管理職になって出世して、定年退職すれば天下りできる?ホント?ところでそれ、どれほど凄くてうれしいの?

当然ですがポストってのは上に行くほど減っていきます。天下りというか、再就職する先ってのは、たいがい最終時点のポストに応じて決まってきますから、同じ管理職といってもよほどエライ人にならないと、大したポストなんてありません。

役所のエライ人って魅力あります?

そして最も大変なのは、エライ人には代わりがいないってことです。

下っ端は周囲にたくさん人がいますから、困った時は助けてもらえたりします(もちろん人によりますが)。

ですが、管理職は職位に応じて責任分担はあるものの、基本的には自分の仕事を理解している人ってのは自分しかおらず、替えがききません。大事な仕事となると、休むことすらできないんです。

そして休日等でもイベントに駆り出され、これまた代わりがいない。今時は家庭を大事にするのが当たり前、なのに休日返上も当たり前。

威張れます?上述のとおり今時は部下に対して威張ることはできません。そして首長や議員に対しても頭は上がりません。誰にむかって威張れるんでしょうか?

お給料が高いですか?いいえ。安いです。残業代もありません。休日出勤させられて、でも代休も事実上取れません。代わりがいないからです。

民間の厳しさを知らん!とかいうご指摘は、普通ならごもっともですがここでは見当違いです。組織の中にいる人がどう感じるかが問題なんです。

よーするに、役所の管理職って、下っ端からみて魅力的に見えないんじゃないかってことです。

出世を望まない人ばかりの組織ってイタイ

そんなこんなで、下っ端にとって管理職ってのが魅力的に見えるだろうか?と冷静に考えたとき、とてもそうは思えません。つまり、下っ端が出世を望むような組織じゃないってことです。

これって実は恐ろしいことじゃないですか?

切磋琢磨しようと思いません、ってことですからね。競争しないんです。適当にのらりくらりと下っ端をやってるほうが楽ちん、お給料も大して違わず、責任をかぶることもない。

部下が何か問題おこしたとして、記者会見で頭を下げて10秒間静止、なんてことしなくて済むんです。

そらぁ、役所のレベルが下がるのも当たり前。昇任を望む人が減るのも当たり前です。

そーゆー根本的な問題を見据えないで、単に昇任試験を受けやすくしよーとか、みんながこの人イイっていってくれたら押し付けやすいかも…なんてことやってるようじゃ、本当に優秀な人が役所で出世なんて望むはずありません。

このことは、別に報道にあった市役所だけの問題じゃないですよね。国家公務員にしたって、最近は東大卒の連中がキャリア官僚を目指さなくなった、なんていうじゃないですか。ほぼほぼ同じ構図なんじゃないかと思います。

公僕ってのを、「公の下僕」と間違えてませんか?

仕事はしんどい、尊敬もされない、金も稼げない。そんなところで出世しようなんて思うはずないし、優秀な人がその世界に入ろうなんて思うわけありません。ちょいと大げさな言い方すれば、社会全体がヤッカミ半分で叩きすぎた、その行きついた先がこの状況なんじゃないか、と思う次第。

だから、私もやめたんです。自分が優秀とは思ってませんけどね。

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