住民基本台帳とか。

電脳雑記

私らを管理する仕組みとしては、住民基本台帳とか戸籍とかいったものがあります。普段は大して気にするようなものじゃありませんが、ふとした拍子に急にこれらを気にする必要が生じ、面倒くささに辟易することがあります。

今更だけど住民基本台帳って?

市町村単位で作られる住民の台帳で、自治事務とされています。

根拠として住民基本台帳法というのがございまして(法律自体をご覧になりたい方はこちら;e-gov法令検索のサイト)、市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して住民基本台帳を作らないといけません。

そして住民基本台帳に記載されている事項のうち、氏名、住所、性別、生年月日の4情報と、個人に付与された住民票コード、これらの変更経過情報の6つのデータを「本人確認情報」として、住民基本台帳ネットワークシステムで全国規模で共有(と言っていいのかな?)する仕掛けになっており、住民票の写しを全国どこの市町村でも交付してもらうことができるのはこのシステムのおかげだったりします。

肝心なことは、個人がその自治体の住民であることを示すデータである(=居住地を登録する制度である)、ということです。

ちなみに、この住民票コードはマイナンバーとは違います。

今更だけど戸籍って??

こちらは戸籍法というのがございまして(戸籍法自体をご覧になりたい方はこちら;e-gov法令検索のサイト)、こちらは第1条で法定受託事務と定義されています。

とても簡単に言うと、家族単位で国民を登録する制度で、家族の関係(誰が親で誰が子で…みたいな。)を記録しています。これも現在は全ての自治体で電算化されているそうですが、全て電算化されたのは2020年(令和2年)と言うことですから比較的最近の話ですね。

この戸籍システムは、法務省によって標準規格が定められているそうです。戸籍法第118条第2項により、システムを導入するためには、市町村長がシステム化したいよ、と法務大臣に申し出て、法務大臣がやってもいいよ、と指定したことを告示しないといけません(よーするに法務大臣が許可せんといかん、とゆーこと)、とされています。

ちょいと頭の片隅にでも置いといていただきたいのは、国が自治体の行う事務に関して全国規模で統一されたシステムの仕様を定め大臣許可を得て導入させることを定めた先例がある、ってことです。それをちっともやろうとしないことが、デジタル化の遅れの大きな要因じゃないかな、と筆者は思っておるです。

もちろん、戸籍のシステム化が完全に実現するまでにはずいぶん時間(1994年(令和6年)の戸籍法改正から、2020年(令和2年)の御蔵島村の電算化完了までの26年)がかかってますが。

一般ピーポーにとって面倒くさいこと

先のお話のとおり、住民票は住民であることを示すだけです。

家族の関係を示す公的な書類が欲しい(典型的な例は相続ね)であるとか、禁治産者でないことを証明するための身分証明(古物営業許可申請などで必要)とか、そういったものは戸籍を管理してもらっている本籍地の市町村で出してもらわねばなりません。

住民票ならコンビニ交付も可能ですが、戸籍関係はそうはいきません。今は郵送による交付申請が可能ですので、市役所や町役場・村役場まで行かねばならぬ、なんてことは多少緩和されてはいるものの、面倒くさいことこの上ないです。

また、戸籍には附票というのがあります。個人の住民票の変遷を記録したものです。戸籍と住民票を紐づけるようなデータです。住民票では現住所しか管理する必要がありませんが、戸籍の附票は過去の住所地が管理されており、どこそこにいつ住んでいた、みたいなことを証明することができるようになっています。

ややこしいのですが、この戸籍の附票は「戸籍の」と言っておきながら法律上は住民基本台帳法に規定されています。なんだかなぁ。

このように、住民票と戸籍に記載されている情報は似たような内容ではありますが、その用途は異なっており、記録している情報も微妙に違っていて、それぞれを統制する法律があって、それぞれを所管する省庁があるってわけです。

似たような情報のはずなのに分かりにくいし、面倒くさいですよね。

統合してはいかんのか?

ここからは、邪推がかなり入ります。

たぶん、国の関係者にとって面倒なんです。関係者間を調整するのも大変だし、その割に地味なもんだから誰も褒めてくれないし、多分またぞろ国が情報管理なんかするんじゃねぇ、みたいなことを主張する妙な管理大嫌い派がそりゃもう盛大に反対することでありましょうし。

お気づきかどうかわかりませんが、住民基本台帳法の所管省庁は総務省、戸籍法は法務省です。これらの情報を統合しようとすると、省を跨っちゃうんです。これがまた大変。ひと昔前なら、自分の縄張りに入ってくるんじゃねぇ、ってゆー所管争いになったでしょうし、今時だと、そんなもんお前んとこでやりゃいいじゃねぇか、ってゆー消極的権限争いになってしまうかもしれません。

本当は、こーゆーことを調整して交通整理するのがデジタル庁の役割であるべきじゃないか?と思うんですが、どーもそんな具合には見えませんね。マイナンバーのようなしょうもない仕組みですらあんな大混乱になるんじゃ、ねぇ。

住民基本台帳と戸籍に関するデータの管理については、システム屋的な発想であれば、個人をキーにして付随する家族情報を整理するDBを設計するくらいはすぐ思いつくことと思います。住所の履歴が必要です…はい、そうですかってなもんですよね。それらを整理したDBが全国規模で国民全員について作成されていれば、各自治体で出す住民票や戸籍謄本の類も簡単に作成できることでしょう。

自治体が管理せにゃいかん?だったらデータへのアクセス権を適切に設定できれば十分ですよね。最悪でも、現在の住民基本台帳ネットワークシステムのように自治体ごとに整備すりゃいいわけで。でもおそらく、国でまとめて作った上で適切なアクセス権を各自治体に付与する、ってほうが日本全体で安上がりになることでしょうし、システム的にも大変分かりやすい仕組みになると思います。

個人のレベルではそう思っている人は少なくないことでしょう。

でも国全体のレベルとなると…先述した法律の所管の問題からはじまって、市町村の間でも推進派と慎重派に分かれて…ってことになるのは、ほぼ間違いありません。

DXの理想と現実

この件、DXというの、無駄な事務を排除するためにデジタル技術を利用するのであって、無駄な事務の迅速化が目的ではないはずですが、実際にはなかなかそうはならない、という典型じゃないかと思います。

しかし、個人と付随する情報の在り方が、これほどイビツで複雑で分かりにくくなっていては、効率が悪いことこの上ないようにも思います。

本来は、データのあるべき姿を設計してから、それにあわせてややこしくこんがらがった法律を整理し直し、その上でシステム開発しないといけません。この法律の改正ってのがまた大変です。下手に政争の道具にされちゃったりすると、またぞろ迷走につぐ迷走、妥協につぐ妥協で妙ちくりんな制度・仕組みになってしまう恐れが多いにあります。

本当はいい加減、そういう視点・論点でDXを語れる偉い人が登場してもよさそうなもんですが、相変わらずDXというとRPAだデジタル化だオンライン化だ、ハンコ廃止だタブレット導入だなどと言うばかりで、社会の制度や法律自体を見直そうなんて話にはならないのは、こうした面倒くささが原因なのかなぁ、って思ったりすると、なんかダメダメだよなぁと絶望的な気分になります。

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